貯金が1,000万円を超えると「資産運用の世界」が変わる?
1,000万円あると、どのような金融商品にも投資できるようになる
意外と知られていない事実なのですが、保有している資産額によって、投資できる金融商品というのは大きく変わります。
1万円程度から投資できる商品にも「投資信託」や「外貨」、「国債」など種類があるので満足してしまいがちですが、手元の資金が1,000万円にもなってくると、本来アクセスできなかった様々な高額商品の門戸が開かれるのです。
ここで、投資商品の種類に応じた、最低投資額を一覧にしてみました。
(実際の最低投資額は、具体的な商品に応じて多少のバラつきがあるのでおおよその数字として認識して下さい。)
最低投資額 | |
定期預金 | 1円〜 |
保険 | 3千円〜 |
個人向け国債 | 1万円〜 |
投資信託 | 1万円〜 |
個別株式(単元株価が安いもの) | 1万円〜 |
社債 | 10万円〜 |
REIT | 20万円〜 |
不動産小口化商品 | 100万円〜 |
ファンドラップ | 300万円〜 |
個別株(単元株価が高いもの) | 400万円〜 |
国内ヘッジファンド | 1,000万円〜 |
プライベートバンク | 5,000万円〜 |
海外ヘッジファンド | 1億円〜 |
貯金が1,000万円を超えると資産運用の世界が変わってくると言われる要因の一つは、これです。
貯金が1,000万円を超えると、ようやく、世の中の、あらゆる投資商品が購入できるようになる、ということですね。
投資の効果が充分に大きくなる
時々、「利回り50%超え!」と言った高利回りを謳った怪しい投資商品を目にしますが、どのような投資方法であれ「確実に利回り50%」ということはあり得ません。
世の中のどのような商品に投資しようとも、”健全な投資”によって得られる利回りは、2%から12%ほどです。
さて、ここで、この “健全な利回り” によって1年間に得られる、利益の絶対額に注目してみましょう。
5%で運用した際の利益 | |
元手:10万円 | 5千円 |
元手:100万円 | 5万円 |
元手:1,000万円 | 50万円 |
元手:3,000万円 | 150万円 |
同じ5%の利回りでも、元手がいくらかによって大きくインパクトが異なることが分かると思います。
100万円を元手に年間5万円の収入を得たところで生活の何かが変わることはありませんが、1,000万円を元手にすることで年間に50万円(月に4万円)の収入が増えるのであれば、明確に生活に影響が出てくるでしょう。
「貯金1,000万円を境に資産運用の世界が変わる」「運用を本格的に考えないといけない金額は1,000万円から」と言われているのは、これらが理由なのです。
1,000万円の運用は、「ライフプラン・20年後の目標」を考えるところから
ライフプランの立て方
資産運用を開始するに当たって、まず取り組むべきは「商品探し」ではありません。まずは、「人生の計画」を立てる必要があります。
これは、一般的に「ライフプラン」と呼ばれているものです。FPが運用の相談に乗る時は、まずはこのライフプランを作成することからサポートします。
これはFPがいないとできないというものではないので、皆さんも改めてノートなりエクセルなりに、これからの人生設計を書き出してみて下さい。
年齢 | イベント | 必要な資金 |
---|---|---|
39 | 住宅ローン残り | 3,200万円 |
40 | 車購入 | 550万円 |
41 | 長女小学校入学 | 190万円 |
41 | 長女習い事・塾 | 250万円 |
45 | 住宅リフォーム | 100万円 |
47 | 長女中学入学(公立) | 150万円 |
50 | 長女高校入学(公立) | 150万円 |
53 | 長女大学入学(私立) | 300万円 |
54 | 車購入 | 600万円 |
60 | 両親の介護 | 1,000万円 |
65 | 退職(老後資金の準備) | 2,000万円 |
まずは、自分は、これからの人生でどのようなことがしたいのか。どのように暮らしたいのか。誰と暮らしたいのか。どのようになりたいのか。何を実現したいのか。
そして、それに当たり具体的にどのような出来事(ライフイベント)を想定しているか。そのためにはいくらお金が必要か。
これらを書き出すことで、自分の人生単位で必要なお金とそのタイミングが可視化されます。
ライフプランを元に、20年後の目標を設定
自分なりのライフプランが完成したら、次は、運用における目標を決めましょう。
ライフプランと自分の収入を元に、自分は今ある貯金を、20年後にいくらにしたいと考えているのかを明確にしましょう。
「今ある1,000万円を20年後に2,000万円にする。」
1,000万円での資産運用シミュレーション
1,000万円を20年運用する場合のシミュレーション
1,000万円を20年間運用する場合に、利回りによってどのように差が出てくるかをシミュレーションしておきましょう。
1,000万円を元手に20年間運用した結果 | |
利回り:2% | 1,486万円 |
利回り:3% | 1,806万円 |
利回り:5% | 2,653万円 |
利回り:7% | 3,870万円 |
利回り:10% | 6,727万円 |
利回り7%,10%となってくると、20年後の運用結果がやたら大きくなっていますが、これは”複利効果”によるものです。実際にこの通りの数字になるので計算してみて下さい。
運用によって資産が増えると、その増えた分も運用に回っていき更に資産が増えるという風に雪だるま式に資産が増えていくんですね。20年近く運用すると、想像以上の額になってきます。
(資産運用の大切さが分かるかと思います。)
1,000万円を元手に目標を達成するに当たって、必要な利回りを把握する
運用のシミュレーションをすると、自分に必要な利回りが見えていきます。
「今ある1,000万円を20年後に2,000万円にするためには、3%から4%程度の利回りが必要。」
1,000万円を運用する方法は、何がベスト?
定期預金
銀行のお金を預けているだけで、最低限の金利が付きます。元本保証があるという点で、リスクは最も低い投資の一つです。
しかし、金利は「運用をしている」と呼べるレベルにはなく、大手メガバンクで0.002%、ネット銀行でも0.02%から0.2%程度となっています。
いくらリスクが低いとは言え、最も金利の高いネット銀行の0.2%を活用しても1,000万円を預けて年に2万円の利益。健全な運用で3%以上は十分に狙えることから、資産運用の方法としては選択肢から外れます。
保険
保険には、支払った保険料が返ってこない「掛け捨て保険」と、支払った保険料が蓄積され満期になると返戻される「貯蓄型保険」とが存在します。
このうち、「貯蓄型保険」に関しては、保険料がただ積み立てられるだけでなく、自動的に運用されることが一般的です。
つまり、”保障機能” と ”貯蓄機能(運用機能)” とがセットになっているということですね。このため、この貯蓄型保険への加入をある種の資産運用と考えることもできるのです。
保険での運用は、例え保険会社が倒産したとしても、「生命保険契約者保護機構」により契約者保護が図られますので、契約額の90%は保証されています。資産を大きく失う可能性は極めて低く、非常に低リスクの商品と言えるでしょう。
利回りは、0.01%から0.5%ほど。保障という本来の保険の目的に、ほんの少し運用の要素が追加されていると考える程度のものでしょう。
保険の営業を受けたことがあれば、「貯蓄型保険であれば資産運用としても活用できる」という説明を一度は聞いたことがあるかもしれません。
しかし実態としては「預貯金」や「国債」とほとんど変わらない利回りしか出ず、真剣に運用を考える場合は選択肢から外れます。
個人向け国債
国債とは国の発行している債権のことで、国債での資産運用とは簡単に言うと「国にお金を貸して、決められた金利を受け取る」ということです。
国が元本も利子も保証しているという意味では実質的に元本保証であり、かなりリスクの低い商品です。
なお、個人向け国債には最低金利が設定されており、これが0.05%となっています。
現在、国債の利回りが最低金利を超えることは考えづらく、実質的にはこの0.05%で運用をしていくことになります。
0.05%の利回りでは、1,000万円を預けても年に5,000円の利子がつくのみ。こちらも、資産運用の方法としては選択肢から外れます。
投資信託
投資信託とは、「株」や「債権」といった複数の投資先を一つのパッケージ商品として売り出しているものです。
「どの株をどの程度保有し、どの債権をどの程度保有し…」というポートフォリオが商品ごとに設定されており、これはアセットマネジメント会社が作っています。
利回りは商品によって大きく異なりますが、よく販売されているもの(国内/海外の株式型)で過去20年間(リーマンショックを含む)の平均値をとってみると、1%から3.5%程度です。
※ 手数料差し引き後の数字として算出しています
良い点としては、一つ投資信託を買うだけで実質的に様々な投資先へ資金を投下していることになるため、「分散投資」がしやすいこと。悪い点は投資信託自体の数があり過ぎて良い商品を選ぶことが難しいことです。
1,000万円を運用するに当たっての選択肢としてはアリですが、ポイントとして「フィンテック」「ナノテク」「人工知能」など、特定の業界へ集中投資するテーマ型投資信託は、絶対に避けるべきです。
社債
社債とは、会社が発行している債権のことで、債権で運用するとは「特定の会社にお金を貸して、決められた金利を受け取る」ということです。
会社が元本も利子も保証してはくれますが、国と比較すると“倒産”のリスクは上がります。満期までに債務不履行に陥った場合、元本は保証されません。
利回りは、0.02%から4%ほど。一般的に、会社の信用力が高いほど利回りは低く、信用力が低いほど利回りは高くなります。
ソフトバンクの社債(2%)などは、最近、非常に人気の商品として世に出ましたね。
ある程度信用のおける会社が発行しているタイミングで、かつ自身が運用として1-3%前後の利回りを狙っている場合に、社債は選択肢に入ります。
ファンドラップ
ここ数年で一気に知名度が上がってきたファンドラップ。
仕組みとしてはSMBCや野村証券と言った大手の金融機関に数万円から数千万円のまとまった資金を預けて、運用を一任するというものです。
銀行の預貯金が500万円を超えたタイミングで、預入銀行の運用部門から資産運用のご案内という形で営業の電話が掛かってくることなどがあります。
こちらのリスク/リターンの希望に応じて運用の方法をオーダーメイドでカスタマイズしてくれますので、リスクを下げたい旨を伝えればそれに応じた運用内容を享受することができます。
ファンドラップを展開している金融機関によって利回りに差がありますが、運用の利回りは、1%から5%程度。
※ 手数料差し引き後の数字として算出しています
利点としては分散投資が行える点と、一度預け入れてしまえば後は勝手に投資先の組み換えを行ってくれるので投資家が時間を使わなくて良い点。
問題点は、投資先を決める人間が「金融機関で働くサラリーマン」であって真に投資のプロとは呼び難い点です。その為市場平均に大きく打ち勝つような運用を期待することは出来ません。
とにかく運用のことは一任したい、手離れすることが価値であるという場合には選択肢として検討するのもアリでしょう。
個別株
「TOYOTAの株」、「任天堂の株」と言ったように、個別の株式を購入するというのも資産運用の方法の一つです。
銘柄によっては1年間で2倍になるものもあれば、半分になるものもあります。どの程度分散投資するかにもよりますが、現実的に10銘柄程度と考えるとリスクは比較的高い投資方法です。
過去20年間の、日経平均の平均利回りは、0.78%。素人がランダムに投資した場合を考えると、このあたりがリターンの期待値となります。
なんと言っても投資する銘柄を選ぶのが難しく、投資に1日5-6時間程度を費やせない限り実質的にギャンブルとなってしまいます。
また、リターンの期待値も、あまり高くはありません。
ライフプランを元に安定的に資産運用をすることを考えると、自ら(勘を頼りに)個別株へ投資するという方法は選択肢から外れてくるでしょう。
国内ヘッジファンド
知名度は高くないですが一部の富裕層が利用している、国内ヘッジファンド。一流のファンドマネージャーに運用を一任するというサービスです。
「絶対リターンの追求」と言い、どのようなマーケット環境においてもプラスのリターンを目指すというのがヘッジファンドの特徴です。
これは、ヘッジファンドの成り立ちがそもそも「金融危機を恐れた富豪達の運用アドバイザー」にあったことから来る流れです。
利回りを公開していないファンドも存在するので正確なデータの入手は難しいですが、有名なヘッジファンドの平均利回りは4%から10%程度。
※ 手数料差し引き後の数字として算出しています
利点としては、なんと言っても利回りの高さ、そして手離れの良さでしょう。投資のプロに完全に任せることができるので、預けた後は定期で送られてくる運用レポートを確認するのみで大丈夫です。
問題点としては、そもそも投資に関してハードルがあることです。国内ヘッジファンドに投資をしようと思う場合には1,000万円の貯金が必要ですし、資金を持っていたとしても実際に投資ができるかどうかは面談をするまで分かりません(投資家の選定を行うファンドもあります)。
充分な資金がある場合には、非常に良い選択肢になってきます。
「1,000万円の運用」、運用手法別のまとめ
商品\特性 | 最低投資額 | 平均利回り | 注意点 |
定期預金 | 1円〜 | 0.002%〜0.2% | 元本保障 |
保険 | 3千円〜 | 0.01%〜0.5% | (ほぼ)元本保障 |
個人向け国債 | 1万円〜 | 0.05% | 元本保障 |
投資信託 | 1万円〜 | 1%〜3.5% | 分散投資可能、商品を選ぶのが困難 |
社債 | 10万円〜 | 0.02%〜4% | 良い商品があるかどうかが、時期による |
ファンドラップ | 300万円〜 | 1%〜5% | 分散投資可能、手離れが良い |
個別株 | 400万円〜 | 0.78% | 銘柄を選ぶのが非常に困難 |
国内ヘッジファンド | 1,000万円〜 | 4%〜10% | 分散投資可能、手離れが良い |
1,000万円を運用したいと思った時には…
- ライフプラン/20年後の目標を立てる
- 1,000万円を運用した場合のシミュレーションをし、「必要な利回り」を算出する
- 投資可能な商品の特性を知る
- 興味のある商品へアクセスする
以上、長くなりましたが、お付き合い頂き有難うございました。