みんなで大家さん

実際の営業資料からひも解く。「みんなで大家さん」は怪しいのか?【FP監修】

元本保証・年平均6-7%の不動産投資、ということでネットを賑わせている「みんなで大家さん」。

 

スキームとしては、不動産を小口化し、100万円から投資できるようにするというものです。

 

ネットには、「最高の投資先」といったポジティブなものから、「投資先詐欺ではないのか」といったネガティブなものまで様々な意見が溢れているようです。

 

 

今日は、ネットに流れている”噂”ではなく、実際に問い合わせをし営業資料を読み込んだ元証券マンが、みんなで大家さんの実態に迫ります。

 

ゆうすけ
ゆうすけ
みんなで大家さんは、最高の投資先なのでしょうか?それとも、何かしら重大なリスクが潜んでいるのでしょうか…?

 

正しい「投資先の見分け方」

さて、本題に入る前に少しだけ小話を。

 

金融商品というのは、”まず人の資産を預かる”ところからビジネスがスタートするため、詐欺の温床となることが多い世界です。

 

運用という提供物の対価として実際に顧客から受け取る手数料は、預かっている額のうち数%程度ですが、「その前にまず大きな現金を預かる」という商品上の重要な構造があることが、この原因です。

 

詐欺が多い怪しい世界でかつ、商品自体の実態が分かりづらい金融商品を正しく判断するために最も重要なのは、一次情報に当たるということです。

 

ゆうすけ
ゆうすけ
snsに流れている情報、人伝の噂などは、事実がかなり婉曲されている場合が多く、全て鵜呑みにするのは危険です。

 

例えば、株式に投資しているファンドの信頼性を確認したいのであれば、

  • 直接営業を受け実際に提示された資料を元に判断する
  • 営業担当が実在するか、信頼に足る人物かを確認する(face bookなどで人を直接検索して調べるも良し)
  • 大量保有報告書を検索し、実際にファンドが投資を行っているのかを確認する

と言った地道なアプローチが大切になってきます。

 

みんなで大家さん投資案件としての魅力度まとめ

解説記事が長くなってしまうので、まずはトータルの評価をまとめておきます。

A〜Eの5段階評価になっています。

総合評価 C いくつかの重要なリスクがあるが、それでもという方向け
収益性 B 実利回りベースで平均7%と収益性は高い
リスク C 元本が安全と謳われているが、不動産価値の含み損が膨らんでいる可能性あり
運営の健全性 D 不動産の評価手法を中心に懸念あり
実績 B 運営年数が長くファンド数も多い

 

ゆうすけ
ゆうすけ
不動産の評価方法、ファンドの運営方法に関して懸念される重大なリスクがありますが、そこを加味しても投資したいという方は検討してみても良いでしょう。

 

送付される営業資料の一覧

 

送付状を含め、8つの資料が送られてきました。

重要になるのは、

  • 運営会社の説明資料である、「都市綜研インベストメントファンド株式会社(営業者)会社案内」
  • 今回の商品の説明である、「「みんなで大家さん42号」商品概要パンフレット」
  • 具体的な契約方法が書かれている、「ご契約に関する手引き」
  • これまでの実績をまとめた、「運用実績表」
  • 代表的な質疑に回答する、「Q&A冊子」

の5つです。

 

それぞれ、詳しく見ていきたいと思います。

 

重要資料1:都市綜研インベストメントファンド株式会社(営業者)会社案内

 

さて、まずはみんなで大家さんを運営する会社の案内資料なのですが、ここでいくつかのポイントを確認していきます。

 

不動産特定共同事業の許可を得ているか

 

投資家を集めて一つの商品に投資させる行為、つまり「ファンド化」を不動産に対して行う場合には、許認可が必要になります。

 

これは、ファンド化して小口にすると、投資をする人の数が多くなっていきますので、運営母体の健全性が担保されていないと詐欺だった場合の被害者の数が増えてしまうからです。

 

「みんなで大家さん」の運営会社である都市綜研インベストメントファンド株式会社は、不動産特定共同事業の許可を得ていると資料で説明があります。

 

実際に公式HPで登録業者の一覧を調べると、大阪府8号に、同社の名前がありました。許認可の点に関しては問題ないと言えるでしょう。

ここは、信頼の持てるポジティブなポイントです。

 

同社は、過去に行政処分を受けている

さて、ここは少し重要なポイントです。

ご存知の方も多いかと思いますが、運営会社である都市綜研インベストファンドは2013年5月に、大阪府から行政処分を受けています。

 

内容としては、資産の過大計上。実際には81億円だった資産を、113億円として計上していたということです。実態としては30億円近い債務超過となっていたということですね。

 

この行政処分について、詳しく書こうと思えばこれだけで記事が5本近くもかけてしまうほどの複雑な問題なのですが、都市綜研インベストファンド側は、一言でいうと会計処理上の認識相違だという見解を出しています。

資料「Q&A冊子」の回答より

参考:大阪府に対する「業務停止処分取消請求」訴訟について

 

この後、同社は営業を再開しているので行政との間で最低限の折り合いはついたということになりますが、会計処理の齟齬で行政が介入した場合には、結局、その後の操作で何かしらの問題を抱えていたことが明るみに出る場合もあります。

 

投資先に関しては火のないところに煙は立たないという見方をすべきであり、運営の実態については多少注意を払った方が良いでしょう。

 

重要資料2:「みんなで大家さん42号」商品概要パンフレット

 

今回投資をするとなった場合に、実際に投資対象がどの案件になるのかがまとめれた資料です。

 

投資のスキームや、リスクリターンの話など、投資家が知りたい情報が一通りまとまっています。

 

みんなで大家さん42号の募集要項

 

みんなで大家さんの基本的な出資の条件です。

ここに関しては非常に魅力的な条件が並んでいると言えます。

 

まず、なんと言っても不動産投資でありながら、小口である点

不動産に投資するとなった際、通常であればローンを組んで数千万円単位で行うか、REITのように値動きのある指標に投資しないといけませんが、100万円という小規模の単位で安定した不動産に投資できるのは良いポイントです。

 

また、想定分配率(想定利回り)が7%と高い点、年に6回とこまめに分配が行われる点など、これらが全て事実だとすれば、投資対象としての魅力は非常に高いと言えます。

 

みんなで大家さん42号の仕組み

 

さて、ここには出資に掛かるスキームが解説されています。

左側に出資者、右側に投資先、という形で説明されており、基本的なファンドのスキームとなっています。

 

不動産特定共同事業者というスキームを用い、特定の不動産に対して複数人の投資家が共同出資する場合、このような形となりますので、特段問題はないでしょう。

 

優先出資、劣後出資というシステムも普通に存在するものなので、特に問題はありません

 

元本安全性を高める3つの仕組み

 

さて、なぜ元本安全性の高いローリスクな投資で7%ものリターンを実現できるのか、という説明なのですが、ここはかなり疑問のあるパートです。

 

1.対象不動産の評価額を安定させる賃貸利益での評価

 

不動産に投資するとなった場合に、年に7%の利回りが賃料によって得られるというのは良いのですが、本来であれば不動産の価値は年々下がっていき売却時にはキャピタルロスが発生します。

 

どのような不動産に投資しようと、投資した時点での不動産の価値が、30年後も同じであるはずがありません。建物は古くなりますので、その分価値が毀損していくわけです。

 

これを、この資料の説明では「賃貸利益による不動産の評価額」という方法をとることで対象不動産の価格を安定させることができると言っているわけです。

しかし、この理論は成り立ちません。

 

不動産の価値というのは、あくまで市場が決めるものなのであって、どんなに保有する側が「このような計算方法に基づき価格が変わっていません」と主張したところで、いざそれを売却しようとなった場合に買い手側が受け入れることはないのです。

 

また、例え賃貸利益をベースに不動産価格を評価したところで、建物の劣化により賃料が下がっていきますので正確に計算をすれば市場に連動して不動産の評価額は下がっていくはずです。

 

 

では、実際には保有期間のうちに価値が下がってしまっている案件をみんなで大家さんはどのようにエグジットしているのでしょうか。

そのスキームは、市場で売りに出さず自ら買い戻す、という手法です。

 

みんなで大家さんは「みんなで大家さん第〜号」という形で次々とファンドを作って投資家を募っていますが、同じ物件を何度も自社で買い回し、その都度投資家を集めています。

調査によると、3号→9号→19号は同じ物件への投資であり、7号→17号→23号も同じ物件への投資のようです。

 

自社で買い戻すのですから、もちろん価格は取得時と売却時で全く変えずに取引を続けることが可能です。

 

しかし、実際には不動産の価値が下がっている(それを自社の理論で同じと言って自社で買い回している)のであり、含み損はどんどん膨らんでいきます。

 

第50号、第60号と進むにつれ、実際の価値よりも割高な案件に投資をしないといけないということになるのです。どこかで破綻してしまう、さながら爆弾ゲームの要領です。

 

この、不動産の価値評価を操作することで価値を一定に保つという手法は、実際の投資家目線でみるとかなりリスクのある、強引な手法であるという事は念頭においておいた方が良いでしょう。

 

2.出資元本の安全性を高める優先劣後システム

 

これは、特に問題のないパートです。

優先出資・劣後出資というスキームを用い、利益が出れば投資家が優先的に受けられる、損が出れば運営会社が先に負担するという形になっています。

 

これでは運営会社がただリスクを負っているだけなので、通常これほどまで投資家が優遇される事はありえませんが、上述した不動産の自社での買い戻しをベースとしており損が出ない自信があるのでこのようなスキームを採用していると考えられます。

 

3.一時的な賃貸利益下落からの影響を緩和

 

評価額の算定には、事業の運用開始からその時までの評価額の平均値を用いるということです。

これも同社の不動産の計算方法の話なので、「1.対象不動産の評価額を安定させる賃貸利益での評価」の付随要素ということになります。

 

平均値をとるので緩和、と買いてありますが、そもそもの不動産の価値の算出方法に疑問が残ります。

 

対象不動産

 

福岡県の水巻町というところにある、施設の1スペースを買い、そこで事業をする会社に貸し出すそうです。

 

グーグルMAPではこの位置。

 

グーグルアースで見てみると、モールのような場所の一角だと思われます。

 

事業者は、農業において革新的な技術を開発しているとのことで、この事業の魅力自体は定かではありませんが、とにかく住居用ではなく事業用の土地への投資ということになります。

 

事業の魅力が書いてありますが、注意すべき点はこの事業がどの程度上手くいくかはみんなで大家さんの投資家にはあまり関係がないということです。

 

とにかく、この事業者が賃料を払い続けてくれるか、撤退した場合に他の借りてが見つかるか、が重要なポイントです。

 

お申込みからご契約まで

 

実際の投資方法ですが、こちらは問題ないでしょう。

 

資料を確認し、出資申込書を提出し、契約書を締結して、出資金を振り込むという手順になります。

 

 

重要資料3:ご契約に関する手引き

 

 

実際の申し込み方法などが記載されています。

 

一通り確認しましたが、実務的な手続きの話なので、問題はないと思います。非常にわかりやすく書かれているという印象でした。

 

重要資料4:運用実績表

 

みんなで大家さんシリーズの、運用実績がまとめられています。

一口あたりの元本評価額に対して、いくらの配当を出してきたかが書かれています。

 

ほぼ全ての案件が想定利回りとほぼ同じ率での分配金を出しており、運用実績としては申し分のないものだと思います。

 

重要資料5:Q&A冊子

同社に関するQ&Aがまとめられています。

 

内容としては、特段気になる部分はありませんでした。

 

まとめ

以上、みんなで大家さんの実際の営業資料から、同社の実態を読み解いてみました。

 

まとめると以下のようになります。

 

総合評価 C いくつかの重要なリスクがあるが、それでもという方向け
収益性 B 実利回りベースで平均7%と収益性は高い
リスク C 元本が安全と謳われているが、不動産価値の含み損が膨らんでいる可能性あり
運営の健全性 D 不動産の評価手法を中心に懸念あり
実績 B 運営年数が長くファンド数も多い

 

いくつかの重大なリスクを加味しても年間7%のリターンが得たい、という方は検討してみても良いかもしれません。

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